夜更かしして小説を読んだのは何年ぶりだろう。
10年ほど前にクビキリサイクルを読んだ勢いでクビシメロマンチストをほぼ徹夜で読んで以来だろうか。
今の私は滅多に小説を買わず、主に図書館で借りて読んでいる。
文庫本を借りて、外出の際は常にポケットに入れておくのがマイブームだ。
ちなみに小説以外の本はちまちま買っていたりする。
エッセイを買うことが多いだろうか。
さてさて、そんな私が夜更かしして一気に読み終えてしまった小説は「ミウ —skeleton in the closet—」である。
今まで手に取る機会がなかったので初だが、著者の乙野四方字は名が知れているようだ。
では、ざっくりと「ミウ —skeleton in the closet—」がどう面白かったのかを紹介しよう。
きっかけが日常的
物語の導入部は、主人公が中学時代の卒業アルバムを見返したことから始まる。
そこから物語が動いていくのだが、どのきっかけも一般人の日常で起こってもおかしくない、当たり前の行動なのだ。
ふとした表紙に卒業アルバムを開くことがあるだろう?
そんな感じで、主人公はふと卒業アルバムを開き、ふと気になる作文を見つけ、それについて中学時代の友達に電話で聞いてみて——
といった具合に、ある意味ドラマチックではないと言える展開が続く。
そんな言い方をすると逆に面白くなさそうだろう?
しかしそうではないのだ。
常に先が気になる
とにかく引きが上手い。
常に「ここからどうなるんだろう」と気になるようになっている。
だからこそ夜更かしして読んでしまったのだ。
少なくとも、眠くなるよな退屈展開はなかったということである。
謎が謎を呼び、というような展開で、目の前の問題が解決したと思ったら更なる問題があったり、はたまた問題を解決しようとしたらさらに不可解な事実が明らかになったり。
しかし前述の通り、それらのきっかけはどれも日常的であり、ご都合主義な展開はない。
だからこそ面白い。
ほどよく難解
この作品はミステリである。
謎があるし、人が死ぬし、探偵役のキャラもいる。
自然と「誰が犯人なのか」「どういう理屈でこうなったのか」と考えながら読むことになるだろう。
ミステリの醍醐味である。
そして、探偵役が事件の真相を解き明かすより前に、何となく真相が予測できるはずだ。
その予測はきっと当たっているだろう。
しかし、その予測だけが真相の全てではないはずだ。
ネタバレしないように書いているので曖昧な表現になってしまうけれど、難解すぎてわからないミステリは読者を置いてけぼりにする。
ある程度「こうじゃないだろうか」と読者が推理できる余地を残しつつ、しかしそれを上回る真相も用意されている。
だから読んでいて、そして読み終えて「面白い」と思えるのではないかと思う。
「ミウ —skeleton in the closet—」はそんな体験ができる良いミステリであった。
個人的な感想だけれど。
ちなみに私は文芸批評とか齧ったこともないし、小説を深く読むタイプでもないので、完全にミーハーな感想であることは付け加えておきたい。