ビルドンブング

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小説で声を出して笑ったことはあるか【今週読んだ小説】

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意気揚々と図書館で本を借りるが、返却期限になっても全て読み終えていない。
図書館の返却カウンターで出した本の半分を指差して「こっちはもう一度借りたいです」というみっともなさ……
「読めもしない量を借りるなよ」と内心バカにされているのではないかと、優しそうな図書館のお姉さんを疑ってしまう。
まあ、私の気にしすぎだ。
読めると思って借りたのに読みきれなかったことを恥ずかしいことだと思っているのは私自身だけなのだ。
周りも同じように思っているのでは、という思い込みがよくない。
別に、延滞しているわけでもなく、他に借りたい人の予約が入っているわけでもないのだから、もう一度借りたって構わないはずだ。
 
今週の2冊

彼女たちの犯罪

とてもシンプルな表紙に、単純な言葉で構成されたタイトル。
今まで読んできた横関大の小説はタイトルやカバーイラストに何かしら気を惹かれるところがあったのだが、本作は特にない。
ではどうしてこの本を読もうと思ったかといえば、図書館にある氏の小説のうち、パッと手に取ってしまうようなものは読み終えてしまったからだ。
後は消化試合のようなものである。
 
さて、手に取った動機はかなり消極的なものではあったが、作品としては終始楽しめた。
とある一人の男性に関わった3人ないし4人の女性が、それぞれの事情で犯罪に関わる物語。
まあ、タイトル通りだ。
推理小説としては割とありきたりな感じで、読んでいる途中でメイントリックには気づいてしまうだろうし、気づけるような書き方をしていると思う。
では本質、この作品で楽しむべき部分は何かというと、
 
本作は3章で構成されている。
第1章では結婚できない女性と、結婚したけど妻という自分の存在意義がわからなくなっている女性、それぞれの生活が描かれ、自然に2人に感情移入できる。
第2章では事件が起こり、刑事がメインで動く。第1章では普通の人だった女性が、なんだか雲行き怪しくなっていく。
第3章はいよいよ解決編。
面白かったのは、自分がついつい感情移入してしまうキャラクターが、物語が進むにつれて変わっていったこと。
誰しも、主人公ないし自分に近い立場のキャラクターに多かれ少なかれ感情移入して小説を読むだろう。
それが安定しなかった。
裏表だけでは済まない人間の多様性をうまく描いているのだと思う。

工学部・水柿助教授の日常

これは面白い小説だ。
物語性は低い。面白いのは文章だ。
数年前にも読んだことがあるのだが、久々に読むと他の小説とは違った文章に触れられる。
エッセイに近いのだろうか。(エッセイを普段読まないので断言できない)
フィクションの皮を被った実話のようだが、そう思わせるように仕掛けられたフィクションにも思える。
不思議な感覚だ。
まあ、面白いからフィクションでもそうじゃなくても支障はない。
タイトル通り「日常」が描かれているが、実はミステリ小説とは何か、という考察が散りばめられている。
個人的に「プレゼントの十戒」は思わず笑ってしまったし、声に出して読んでしまった。
小説を読んでいて声を出して笑う経験は珍しい。
こういうユーモラスでどこか知的さを感じさせる絶妙な文章が書けるようになりたいものだ。
水柿助教授シリーズは本作含め3作あるので、これをひたすら読み返し続けていれば、もしかしたら身につくかもしれない。
身に付けたところで、使う場面があるかどうかは疑問だが。