ビルドンブング

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好きで読みたい【今週読んだ小説】

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【今週読んだ小説】の更新は、今週のこれが最後になると思う。
実は実験的に「週に1回を小説の感想にすれば実質的に週に書く記事が1本減るのでは」と思って始めたことではあるのだが、それはそれで読書が「ブログに感想記事を書くための行為」になってしまった。
つまり、どこか義務感で小説を読むようになってしまったということである。
このことについては、後日個別記事でまとめようと思う。
それでも小説を読むこと自体は好きなので【最近読んだ小説】として、ある程度読んだ小説が溜まったら記事にするつもりだ。
 
今週の2冊

工学部・水柿助教授の逡巡

水柿君シリーズ2冊目。
前回の「日常」では水柿君が小説家になる前の話だったが、今回の「逡巡」では小説家になるきっかけと、なってからの変化がメインになっている。
文章は相変わらず面白いものの、笑えるという面白さでは前回の「日常」の方が上だったように思える。
では「逡巡」が駄作かというとそんなわけはなく——
およそ小説ではみられないような表現技法や文章表現が多用されているので飽きることがない。
文学的には評価されることはないのだろうけど、読む側はそれを文学としてではなく娯楽として読んでいるのだから関係ないのだ。
面白くて読みやすくて、そんな小説だ。
 
さて、この水柿君シリーズ、今買おうとすると幻冬社文庫のものになるだろう。
しかし個人的には幻冬社ノベルスを図書館で探して借りるのがオススメだ。
なぜならイラストが可愛いから。
みているだけで微笑ましいし、本文を読んでから眺めると、なおのこと微笑ましい。

世界でいちばん美しい

「マリッジ:インポッシブル」のような藤谷治の作品が読みたいと思っていて、タイトルとカバーイラストから期待して読んだ。
しかし読み始めてすぐに雰囲気としては「いつか棺桶はやってくる」に近いものだと気づく。
相変わらず文量が多く、見た目のページ数から想定していたより読むのに時間がかかった。
それでも読むのをやめないくらい魅力的な作品である。
冒頭からいきなりたくさんの登場人物が登場して、誰が誰だかわからなくて辟易するのだが、そのプロローグが終わればシンプルな一人称の物語が始まる。
読んですぐに、これは冒頭のあのシーンへ向かう物語なのだと理解できる。
そして、ここからどうやってあのシーンに繋がるのかと期待しながらページを捲ることになる。
ではこの小説がそうやって冒頭へ至る期待だけで読ませるものかというと、そんなことはない。
描かれているのは芸術家、ピアニストだ。
天才ピアニストとその周りの人たち。
本物の天才を前にして、凡人、それも自分は非凡だと思いたい凡人がどのような感情を抱くのか……
それが大変によく描かれている。
誰しも身に覚えがあるのでは……?
諸悪の根源みたいな奴が登場するのだが、その人に全ての責任を押し付けていいものかと考えさせられてしまう。
嫉妬の一言で済ませてしまえば簡単なのだろうけど、それぞれにそれぞれの事情があるものだ……