踵に穴が空いたかと思った。
それほどの激痛だったのである。
私の家の風呂場はユニットバスのため、廊下との間に段差がある。
だから扉も床から浮いた高さになっている。
この高さが問題で。
扉は玄関の方に向かって開くので、たいてい風呂場から出た私はリビングの方を向く。
つまり扉に背を向けるわけだ。
そのまま歩こうとすると、足を上げる。
すると、開ききっていなかった扉の角が踵に衝突するわけである。
それが角ではなく扉の下端であればまだダメージは少なくて済むのだ。
「いって」と声に出すくらいである。
だから今までも何度かあったが、そのまで気をつけようという意識はなかった。
それが今回は、奇跡的に扉の角が踵とぶつかったのである。
そういう時は何も声を出せず悶え苦しんだ。
もちろん出血していたが、刺さるほど深くはなく、半日ほどで痛みはあまり気にならなくなった。
しかし気になるのは扉である。
これからは扉をしっかりと開けないといけない。
そうしておけば、踵をぶつけることはないだろう。
ぶつけたとしても角に当たることはまずない。
問題は、こうして扉を開ききる習慣を身につけられるかどうかである。
最初は意識していても、次第に「大丈夫かな」という甘えが出るものだ。
実際今回だって激痛に襲われはしたものの、歩けなくなるようなことはなく「気をつけよう」レベルだし。
これがもっと大怪我だったら、きっともっと大きな対策をしただろう。
扉の角にスポンジを貼り付けるとか。
しかしそれをしないのは、頭のどこかで「まあ大丈夫だろう」と思ってしまっている自分がいるということだ。
スポンジを買って、軽く工作して、扉の角に取り付ける。
と言う作業を想像して「これは面倒だな」「そこまでしなくてもちゃんと気をつけてれば大丈夫だろう」と高をくくっているわけである。
物語だったら後で痛い目に遭うフラグがビンビンではないだろうか。
実際、踵にダメージを負ったのは先週くらいの話で、今の時点ですでに扉を開けきることの方が少なくなっている。
そういえば、最近はこういった手間を惜しんだ不注意からくる怪我は久しぶりだが、小学生の頃まではしょっちゅうだった気がする。
何回も同じ場所を同じような原因で擦り剥いたりしていた。
そういう根本的なところはまだ直っていないのかもしれない。
というか直るのか……?
大人になって怪我をしている人はあまり見ないけれど、性格的に怪我をしやすい性格というのはあって、私もそちらに属するのかもしれない。
と大げさにすることで「気をつけよう」とする意識も少しは強まるだろうか……?