ビルドンブング

自由でシンプルな生活を求めて試行錯誤する記録を毎日更新中(金曜日はその週に読んだ小説の紹介)

恋愛ものを読むつもりが短編集を読んでいた【今週読んだ小説】

久々に週に3冊読むことができた。
今週はちょっと恋愛寄り。
本当は恋愛ものを3冊借りたのだが、その内1冊が少し好みに合わず、最後まで読めなかった。
結果的に、3冊とも一度読んだことのある作者の小説になってしまった。
相変わらず新規開拓ができていない。
ただ、最初に紹介する「初恋料理教室」の作者の小説はこれが2冊目、しかも面白かったので、個人的読みやすい作家に加わった。
 
今週の3冊

初恋料理教室

以前に読んだ「涙をなくした君に」の作者による他の小説を読んでみようと思った次第。
「涙をなくした君に」が暗めな雰囲気ながらも読みやすかったので、今度は明るそうなタイトルを選んだ。
実際、作中は料理教室を舞台として明るい雰囲気に包まれている。
それにしても「涙をなくした君に」でもそうだが、人を腹立たせる親の一言がうまい。
恋愛ものかと思ったが、そこまで恋愛色は濃くない。
というか、長編かと思ったら連作短編のような構成になっていた。
料理教室で同じクラスの4人が、それぞれの立場で料理から得たことがどのように生活に繋がるかが描かれている。
食事と料理が別物であることを痛感した。
私が普段、料理をしないのもあるが、料理をしてみたくなる、というかしたら、できるようになれば楽しそうだな、と思わされた。
料理による人の繋がりや歴史が綺麗だった。
それに、舞台は京都なのだが、それが存分に生かされていた。
最後の参考文献で、これだけのものを書くにはこれだけの資料を読まないといけないのかと驚いた。
 
ところで、料理教室に通うメンバーの一人にフランス人がいる。
そのフランス人の描写や台詞もうまかった。
普段読む小説の登場人物は日本人ばかり、たまに出てきてもアメリカ人くらいなので、かなり新鮮だった。
そんなフランス人のセリフに印象的だったものがあるので、少し紹介。
体重を気にするなんて、ばかばかしい。大事なのは、数字ではなく、見た目なのに
——中略——
体重なんて問題ではない。重要なのは、美しく見えるかどうか、だろう。自分のやりたいことをして、好きなものを食べて、人生を楽しんでいれば、女性は輝いているものだ

愛は苦手

短くも独特なタイトルだ。
「愛が苦手」ではなく「愛は苦手」だ。
愛以外のことは全て得意といった意味合いに受け取れる。
当ブログでは「東京ローカルサイキック」や「展覧会いまだ準備中」でお馴染みの山本幸久の作品である。
こちらも、長編かと思ったら短編集だったパターンだ。
しかも各短編に関連は一切ない。
どことなく、家族や子供がテーマになっているような印象。
また、どの短編も小気味良い。
劇的なドラマではなく「えっ、これで終わり?」と感じるものもあった。
しかし、読み終えてから各短編のタイトル一覧を見ながら思い起こすと、どれもそれで十分だった。
それ以上を描くと蛇足になりかねないような絶妙な終わりどころだ。
ひとつひとつの短編がサクッと読める分量なので、1冊で色々な物語、それも完成度の高いものが楽しめて、たまには短編集も悪くないなと思えた。

マシュマロ・ナイン

ドーピング疑惑で球界を退いた元プロ野球選手が監督として、諸事情で無期限休部となっている相撲部を野球部にして甲子園を目指す話。
わかりやすい青春もののようなあらすじではあるが、何よりもメンバー全員が相撲部で、およそ恋愛要素がないのが他の学園部活青春ものと区別される。
また、監督のドーピング疑惑の真相に迫る、ちょっとした推理要素も含まれている。
こういう、ちょっとした謎を本筋に絡ませて、うまく読者の注意を引きつつ、最後には本筋と謎の真相を関連づけて落とし込んだ結末に持っていくのが、横関大という小説家の持ち味なのではないかと、氏の小説を4冊読んだ今になって気づき始めた。
こうなると、もっと色々と読んでみたいものだ。
 
内容については、甲子園に行けたかどうかは結末に関わるので伏せるとして、後味の良い結末だった。
途中、何度か「これは悪い方向に進んでいるような気がする」と感じさせるミスリードがいくつかあった(私が勝手に深読みしすぎただけかもしれないが)ので、内心ハラハラしながら読んでいた。
野球部が甲子園を目指す話は、甲子園に行けたハッピーエンドもあれば、甲子園には行けなかったものの、部員たちはそれぞれに何か教訓めいたものを得て、将来に向かって進んでいくという形のハッピーエンドもある。
なにぶん、野球部の話である以上、登場人物は高校生なので、あまりバッドエンドは見かけない。
それでも、物語が進むにつれて感情移入して「甲子園に行ってほしい」とまるで本当に存在するかのように応援してしまう。
それが読書のモチベーションになって、休まず一気に読み進めた。
思えば、氏の小説は序盤でうまく心を掴まれて、そのまま一気に読破してばかりな気がする。