ビルドンブング

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夢の見せ方がうまい!【今週読んだ小説】

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今週も3冊読むことができた。
と言いつつ、3冊のうち2冊が過去に読んだことがあるものの再読になる。
良いものは何度読んでも良いものだ。
あるいは、単に私の記憶力が悪いおかげで、新鮮な気持ちで楽しめているだけかもしれない。
もちろん、初めて読んだ1冊「展覧会いまだ準備中」もかなり刺激された。
時間を忘れて最後まで読み進めていた。
大体、読み始めて休憩も忘れて最後まで一気に読み終えてしまうような場合、細かい理屈は抜きにして、心からその小説を面白いと感じている。
 
今週の3冊

展覧会いまだ準備中

先々週に読んだ「東京ローカルサイキック」が面白かったので、同じ作者の本を他にも読んでみることにした。
読み始めてすぐ、登場人物が冒頭からわちゃわちゃと出てきてうんざりした。
裏を返せば、登場人物紹介に文字数を使わず、さっさとメインストーリーに入っているわけで、うんざりしつつもすぐに終わるので読むのをやめるほどではなかったし、最後まで読むと、冒頭で読むのをやめなくて良かったと思える素敵な話だった。
後から思い返せば、ドラマの第1話冒頭で日常の中でメインキャラクターを全員登場させる演出と同じである。
ドラマなら映像もあるから理解しやすいが、文字だけの小説で初めて聞く人の名前を列挙されてもなかなか頭に入らないものである。
まあ、推理物でもないので、誰が誰か完全に把握しなくても雰囲気で読み進めても楽しめたので問題ない。
 
物語は美術館の学芸員として働く主人公が、自分で展覧会を企画するというものだ。
タイトル通りである。
それ以上に、タイトル通り過ぎた。
勝手に展覧会が無事に開催されてハッピーエンドかと思ったら、タイトル通り本当に準備だけで終わってしまう。
それは準備はしたものの開催に漕ぎ着けられなかったというものではなく「展覧会の企画を通すためにがんばるぞ!」というような一見すれば中途半端な終わり方なのだ。
後半は残りのページ数を見ながら大丈夫かと不安になったほどだ。
しかしこの物語の本質は展覧会の開催ではない。
それを通して、さまざまな年齢や立場の人間の、夢との向き合いかたを描いた作品である、と私は認識している。
(なので展覧会の開催まで行かずに終わるというのはネタバレにはならないと思っている)
「自分も頑張らないと」と思わせてくれる、「本気で叶えたい夢はあるだろうか」と考えさせてくれる、力強い一冊だった。

クロノ・モザイク

5年以上前に読んだ小説なのだが、タイムトラベルものという記憶しかなかったので再読。
終盤は「そうそう、そうだった」と読んだところから次々と記憶を掘り起こされて懐かしくなった。
読めば思い出すものだ。
主軸はタイムトラベルだが、未来の自分が遭遇した殺人事件の犯人を事件が起こる前の現在から探るというミステリ要素も含まれている。
主人公に対して「もっとしっかりしろよ!」と感じずにはいられないが、
当時はそんな感情は持たなかったように思うが、それは単に自分が主人公より年上になってしまったからかもしれない。
何年も前に読んだ小説を再読するとこういう発見もあるわけだ。
語り部となる主人公より自分が年上か年下かは、感じ方に大きな影響がありそうである。
そう考えれば、ライトノベルの主人公に高校生が多いのもメインターゲットと同世代あるいは少しだけ年上(中学生が近い未来の高校生への憧れのようなもの)になるように設定しているのだと納得できる。

クビキリサイクル

物語シリーズなどでお馴染み、西尾維新のデビュー作にして、戯言シリーズの1冊目。
西尾維新の小説を全て読んだわけではないが、何だかんだでデビュー作のクビキリサイクルが一番大好きだ。
デビュー作というのは、素人をプロに昇華させただけのエネルギーがある。
戯言シリーズは本格的なミステリー小説から巻を進めるにつれてバトル漫画のようになっていく。
同じ西尾維新の作品で言うと、掟上今日子のような雰囲気からめだかボックスのような作風に変わっていく。
私は序盤の戯言シリーズが好きだ。
実家に帰れば、戯言シリーズ最初の2冊、「クビキリサイクル」と「クビシメロマンチスト」は文庫版だが実物を持っている。
3巻目からは図書館で読んだ上で、わざわざ買って手元に持っておくほどではないかなと感じたので、それきりだ。
面白くないわけではないが、作風が変わって好みではなくなったと言うだけだ。

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確か「ザレゴトディクショナル」だったか、西尾維新がクビキリサイクルには今後使うかどうかはわからないが、とりあえず次巻以降に使えそうな伏線をばら撒いておいたと言うようなことを述べていた。
それを踏まえて久々に読み返してみると確かに、クビキリ本編では全く意味のない意味深な発言や設定が諸所に見られた。
デビュー作ながらこうして次作以降のことも考えた内容にしているあたり、かなり余裕というか、作詞というか、巧いなあといった感想だ。
それでいてミステリー小説として一切の無駄がない構成をしているのだから、さすがとしか言いようがない。
アニメ化もしていて視聴もしたが、やはり小説は小説で楽しむのが100%楽しめる、と思っている。