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ドラマが終わった後の雰囲気を描くという方法【今週読んだ小説】

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物語にはドラマがある。
しかし、そのドラマをどう見せるかは人それぞれだ。
同じ題材を取り扱っていても、作者によって作品は大きく変わる。
なので、特定の小説家の作品ばかりを読むのは控えて、できるだけ色々な作者の小説を読むように心がけている。
しかし読者側にも好みがあるので、どれでも楽しめるというわけではない。
それでも、小説という形で、実物の本として出版社から販売された時点で、ある程度の面白さは保証されていると考えている。
なので、図書館に置かれるような作品であれば、等しく読む価値があると私は思っている。
 
今週の2冊

スナックちどり

名前は知っているが今まで手を出さずにいたよしもとばなな。
森博嗣の何かの小説の引用に使われていたので気になって読んでみた。
これが、好きな小説家に関係している小説家の本を読みたくなる現象だ。
端的に表現すれば「傷心旅行」なのだろうか。
離婚した主人公と、そのいとこの女二人旅。
すでにドラマは終わっている。
劇的な結婚から離婚までの過程、いとこ側の人生、ともにドラマチックな展開は全て回想という形で描かれる。
一方、回想ではない現実は、とてもゆったりとした旅行だ。
街を歩いたり、美味しい料理を食べたり、正直言って、
だが、現実の旅行と劇的な回想とのギャップがかなり際どいバランスで成り立っている。
どちらか一方に偏ると凡作になるのかもしれない。
こういうのも魅せ方の一つとしてあるんだなと感心した。
これがよしもとばななという作家の持ち味なのだろうか。
独特な表現や文体もあったが、読みにくいことはなく、むしろ作品の雰囲気とマッチしていたので、これが本作独特のものなのか、作者の持ち味なのか、もう何冊か氏の小説を読んでみようと思う。

炎上チャンピオン

プロレスを見せつけられた。
舞台はプロレスが自粛になってしまった日本。
何人かの視点が切り替わって物語は進行していくが、根幹にあるのは二人のプロレスラーの動向だ。
ファイヤー武蔵と流小次郎。
永遠のライバルとされていた二人のプロレスラー。
とある事件をきっかけにプロレスが自粛されて10年。
プロレスの再会が物語のゴールだろうということは予測できるので、そこに向かって二人がどう進んでいくのかを期待しながら読み進めることになる。
読んでいると、プロレスが自粛されている状態を窮屈に感じる。
あくまでもフィクションなのだが、どこかもどかしい気持ちになる。
しかし最後にはそれらの感情が一気に解放される展開。
怒涛のラストスパートだった。
タイトルにも入っている「炎上」という言葉を、ファイヤー武蔵が口にするシーンがある。
思えば、そこからが怒涛のラストスパートの開始だったのだ。
プロレスが自粛された日本でありながら、物語は最初から最後まで、とにかくプロレスだった。
おそらく、読み終えたら「プロレスを見せつけられた」と感じるだろう。
最高の読後感だ。