ビルドンブング

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夢と現実の境界を曖昧にするのが上手い【今週読んだ小説】

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無事、小説を読むのが習慣になりつつある。
何が素晴らしいって、図書館に行けばいくらでも無料で借りられることだ。
ビジネス書などは時代もあって、古いものを読んでもあまりためにならないが、新しいものを読むなら図書館だと遅い。
しかし小説に早いも遅いもない。
良い小説はいつ読んでも良いものだ。
どれも新しい小説ではないので、図書館にあるかもしれない。
週末は図書館に行って、読書に興じてみてはいかがだろうか。
 
今週の3冊

そして二人だけになった

森博嗣の小説は好きで、シリーズものは何度も読み返してはいるのだが、シリーズ外の作品はあまり読み返すことがない。
それでも、もう5年以上前に読んだこの小説のトリックは覚えている。
かなり印象的で、一度読めばタイトルを見ただけで思い出せる類のものだからだ。
なので、真相を知った状態での再読となった。
というのは勘違いだった。
物語は理路整然と進んでいき、納得の結末を迎える、ところまでは記憶の通り。
しかし、最後の最後にかき乱される。
真相の部分が記憶からすっぽり抜けていたので、かなり驚くことができた。
ミステリー小説は、トリックを知った状態で読み返すことで2度楽しめるのも魅力だ。
なので、当時とは違う視点で楽しみながら読むことができた。
何気に、各章の最後に挟まれる天才への質疑応答が森博嗣らしくて好きだ。

誘拐屋のエチケット

目を引く黄色いカバーに絶妙なタイトル。
この作者の小説を読むのは初めてだったが、思わず手に取ってしまった。
内容としては、誘拐を生業とするプロの誘拐屋が、新人の誘拐屋見習いとともに行動するようになって余計なことをしてしまう、人情系のストーリーだ。
この新人の見習いが、仕事を邪魔しているような振る舞いで鬱陶しく感じてしまうのだが、読み進めるうちにどこか憎めなくなる。
初めはザ・仕事人といった佇まいの主人公から、どんどん人間味が引き出されていき、どんどん好感が持てるようになる。
見習いの人情と、仕事人から溢れる人間味が、クライマックスを演出する。
 
構成は短編集となっているが、最後にはこれまでの短編に登場したキャラクターが総出演。
1冊の小説として綺麗に完結しているので、短編集という形だが1つの長編としても見れる。
小難しい言い回しが少なく、短編集の構成なので、とても読みやすく、サクサクと読み終えることができた。

イデアの影

先の「そして二人だけになった」と同じく森博嗣の作品。
先が理路整然と進み、最後の最後で何が現実かわからなくなるのに対して、こちらは徐々に夢と現実の境界が曖昧になっていく。
第2章までははっきりと現実なのだが、第3章から怪しくなっていく。
その怪しさが終盤に向けて加速していくのだ。
読み初めはどことなくとっつきにくい内容で、積極的に読み進められなかったが、第3章からはどんどんのめり込むように読んだ。
随所に見られる心の表現が好きだ。
人が死ぬことで失われるのは未来、その未来を想定して空けていたスペースが埋まらないことで、心に穴が空いたように感じる——
終盤の梟から羽をもらってからの急展開が怒涛であった。