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小説は文字だけだからこそ記憶に残りやすい【今週読んだ小説】

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小説→漫画→アニメ・ドラマ
手っ取り早く楽しみたいなら映像作品だ。
しかし、映像作品は視覚に訴えた演出が多くなる。
鈍感な人にとって、役者や作画の表情から何かを読み取るのは難しい。
そして、私は鈍感だ。
 
漫画だと、感情が独白という形で台詞のように現れる事もある。
漫画のイラストと文字のどちらを重要視するかは人それぞれだろう。
私の場合、文字を優先するので、漫画はすぐに読んでしまう。
しかし、なかなか記憶に残らない。
ざっくりとしたストーリーを把握するだけで、深みは出ないのだ。
 
さて、小説だ。
表情や景色なんてそこにはないし、全ての表現が文字で行われる。
毎週楽しく見ていたはずのアニメやドラマより、何年も前に1度だけ読んだ小説がやたら記憶に残るのは不思議ではない。
文字ゆえに、じっくりと味わえるのだ。
10年ぶりに石持浅海の小説を読んで、何となくそんなことを考えた。
 
今週の2冊

あたしの拳が吼えるんだ

最近夢中の山本幸久の小説。
中でも新しい部類で、出版は2020年2月となっている。
歯医者でたまたまボクシングジムに勧誘された小学校4年生の女の子の物語。
才能のある初心者がどんどん成長していくのは、それだけで次の展開が気になってしまう。
時間の関係で3日に分けて読んだのだが、これほど「早く続きが読みたい」と楽しみにしていたのは久しぶりだ。
小説でこのような感情になるのは珍しい。
それもシリーズものではなく単体の作品で。
何気にこれまでの氏の作品と世界観が繋がっているのも妙にワクワクした。
特に「展覧会いまだ準備中」の登場人物の一人であるボクシングをしている女の子“サクラ”のその後が描かれていたのはファンサービスと言えるかもしれない。
他にも「東京ローカルサイキック」で登場した喫茶店のチェーン店、「天晴れアヒルバス」で登場したヘビメタバンドもチラッと登場。
それでいて、それらを前面に押し出さず、あくまでも今まで読んでいた人が「おおっ」と思える程度の控えめな登場名ところも、この作品しか読んでいない人にも親切で好印象だ。
 
構成としては、ボクシングを始めた主人公の小学生の女の子と、その母親の視点が交互に切り替わる。
ストーリー上の大きなイベントは主人公のターンで描かれ、母親のターンではその他の周辺人物のイベントがメインに。
そうすることで、展開上退屈になるであろう練習シーンなどを違和感なくカット、主人公のターンになったら自然に成長しているわけだ。
 
読むと無性にボクシングがしたくなったのだが、それを実行に移すかどうかは……

カード・ウォッチャー

やはり私には黄色いカバーの本をついつい手に取ってしまう癖があるようだ。
もちろん、それだけではない。
10年ほど前に石持浅海の小説をいくつか読んでいた記憶があったからだ。
(内容ははっきり覚えていないが)
 
臨検にやってきた労働基準監督署の人間から、倉庫で過労死していた職員を隠し通そうと画策する物語。
各章のタイトルが
  1. 臨検
  2. 労災
  3. サービス残業
  4. 是正勧告書
となっていて、あらすじを全く知らずに読み始めると、何だか堅苦しそうに感じてしまったが、そんなことはなく、たびたび訪れる死体の存在がばれそうなピンチにハラハラしつつ、最後にはちょっとした謎解きもあったりで、退屈しない構成になっていた。
中途半端に石持浅海の作品の特徴を知っていたので「この人もしかして……?」と疑いながら読んでしまった。
 
ところで最後に「さくら」と繋げて言いたくなるタイトルだ。