なんとまあ、気軽に楽しめる娯楽が増えたことだろう。
「楽しい」と「楽しむ」の違いは、前に食事の楽しさに関する記事で簡単に述べたところだ。
最近はYouTubeやネット配信の動画を楽しんでいる方が多いことと思う。
ここで「楽しむ」が「楽しい」とは違うことが浮き彫りになる。
楽しかった思い出はあるだろうか?
そういった思い出は、後から気づくものだ。
例えば、私は今年の頭に初めて触るC言語で結構難易度の高いプログラムを2週間くらい使って作った。
その最中は常にそのプログラムのことを考えていたし、夜はエラーが直らない夢にうなされたりした。
初めてのC言語とその難しさに頭が痛くなって、頭痛薬を飲んだりもした。
その当時はかなりしんどかった記憶がある。
同時に、その期間を今思い出して「楽しかった」とも思える。
これが「思い出」というものではないか、と個人的には考えるわけだ。
さて、話を戻そう。
インターネットで動画を楽しむとする。
別にネットでなくても映画でもいい。
後からそれを思い出して「楽しかった」と思えるだろうか?
どちらかといえば、その動画を見ている環境、例えば彼氏彼女と一緒に見たとか、普段とは違う特別で美味しいものを食べながら見たとか、そういった外的要因によって「楽しかった」と思えることではないか?
これが「楽しむ」と「楽しい」の違いである。
今の時代は気軽に楽しめる娯楽が増えた。
その瞬間は、嫌なことを忘れて楽しむことができる。
けれど、その時間を後から思い出して「あの時は楽しかった」と思える可能性は低い。
きっと昔は、娯楽というのはもっと特別で、簡単に楽しめるものではなかった。
だから思い出になり得たのかもしれない。
今は違う。
簡単なものを楽しんだところで、後から思い出して満ち足りたような気持ちにはなれない。
それでも目先の楽しさに釣られて、その娯楽を享受してしまっているように見受けられる。
それを指して作ったのがタイトルに使っている「インスタント楽しい」という言葉である。
インスタント食品ばかりを食べていたら体にあまりよろしくないという感覚はあるだろう。
同じように、インスタント楽しいばかりを享受していると、思い出のない、密度の低い人生になるように私は考えている。
まあ、今が楽しければそれでいいじゃん、と言われればそこまでである。
けれど、少し考えてみるくらいのことは、してみてもいいのではないだろうか。