ビルドンブング

自由でシンプルな生活を求めて試行錯誤する記録を毎日更新中

独り言を聞かれなかったことに安心して独り言を聞かれてしまう

当ブログではアフィリエイト広告を利用しています

夕方、時計を見上げては「まだ2時間もあるのか……」と終業時刻に思いをはせる。
パソコンの画面を見つめて入るが、視点は定まらず、意識はぼんやりしている。
集中力は完全に切れた状態だ。
気分転換に、と席を立つ。
しかし行く場所といればトイレか、非常階段を上り下りするかくらいだ。
しかし非常階段を上り下りしようと思えるほど気力も無い。
ここで、体力があっても気力が無ければ体は動かせないのだなという教訓が得られるが、それを教訓として受け取れるほど元気な脳みそではない。
とりあえずトイレに行って個室で用を足す。
ちなみに便器に座っている間は目を閉じている。
資格情報を遮断することで、少しでも頭を休めるためだ。
本当は深呼吸も効果的なのだが、トイレでやる気にはならない。
ただの小便なので、トイレの個室にいる時間なんて長くても2分である。
本当に大便がしたい人のためにいつまでも個室の1つを占領しているわけにはいかないので、さっさと流して個室を出て手を洗う。
さて、もう執務室に戻らないといけない。
トイレから執務室までの距離は20mほどだ。
気分転換になったとはとても思えない。
午前中ならこのトイレへの往復だけでもそれなりに気分転換になるのだが、すっかり仕事に疲弊した午後の頭はその程度で転換されてくれない。
トイレから執務室へ戻る足取りは重たい。
視界には誰もいない。
後ろを振り返ってみても誰もいなかった。
つまり通路には誰もいない。
こういうとき、ちょっと叫びたくなる。
しかし叫ぶわけにはいかないので、音を出さずに喉から空気だけを出すようにして、掠れた小声で叫ぶのだ。
そうすると、息の量や喉の開き具合は叫んだときに近いものが得られ、それでいてかなりの小声に抑えられる。
ちなみに、私がそうやってよく叫ぶワードは「エクシーズ召喚!」だ。
両手の指を思い切り広げて腕を真正面に伸ばすことで、キーボードを叩いて疲れた指のリフレッシュにもなる。

ところで、男子トイレと執務室の間には女子トイレがある。
私が「エクシーズ召喚!」と小声で叫んだのは、男子トイレと女子トイレの間だった、
そしてそのすぐ後、女子トイレから女性が1人出てきた
いや、マスクの下で小さく叫んだだけだから、聞こえていたとは思えない。
女性も、特に私を不審そうに見る様子はなく、聞こえていたとは考えられない。
一安心だ。
私はほっとして「危なかった」と呟いた。
そう、声に出して呟いたのだ。
幸いだったのが、その女性が同じ職場の人では無かったことである。
進行方向は逆なので、女性と私は背中合わせで反対の方向に歩いている。
それでも、タイミング的に私の「危なかった」は聞こえただろう。
何が危なかったんだろう? と彼女の脳内に無駄な疑問符を浮かべてしまったかもしれない。
ここは「もう少しでぶつかりそうな危ないところだったけどぶつからなくて良かった」という意味合いで「危なかった」と呟いたと勘違いしてもらえることに期待するしかない。
いや、そんなぶつかりそうなくらい近くもなかったので、その期待は薄いのだが……
ちなみに、私は執務室まで振り返らなかった。
もしも不審な目で女性がこちらを見ていたら、もう二度と通路で小さく叫べなくなってしまう。
そうなると、夕方の気分転換法が1つ失われてしまうからだ。
とりあえず真っ直ぐ自分の席に戻り、確実に自分にしか聞こえない声で「危なかった」と呟いた。
無駄にヒヤヒヤしたが、考えてみれば独り言を聞かれたかもとドキッとした瞬間から脳内から仕事のことは消えていた。
結果的に良い気分転換になったようで、そこから終業時刻まではかつてないほど捗った。
結果的位に気分転換になったらしい。
かといって、今後そのためにわざと人に独り言を聞かれるかどうかギリギリのところを攻めるような真似は、しようとは思わない。
そんな恥ずかしいことをするくらいなら、疲れた頭を酷使して強引に、かつ嫌々仕事と向き合った方がまだマシだと思える。
ということも含めて、盛大な気分転換は私には無理なのだと、諦めることもできるだろうか?